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情景描写が上達するコツ

さて、今回のコラムは情景描写についてです。

小説を書いていて何が一番難しいかと言いますと、
「映画や漫画のようにハッキリとした映像を見せる事が出来ない」
という点ですよね。

小説は文章だけで構成されていますから、
文章にして書いていない物は、なかなかイメージが出来ませんし
人によってイメージしている物が違ってきてしまいます。

例えば
「僕は夕日の中、公園を歩いていた」
という文章があるとしますと。

その「公園」というのは
代々木公園や万博公園のような広い場所をイメージされる方もおられますし、
逆に地元の小さな公園を連想される方もおられます。

「夕日」にしても同じです。どの程度の赤さをイメージされるかは
読み手によりけりです。

かと言って。

それを詳しく描写しようとして
「僕はビルとビルの隙間で輝く赤ワインのような色の夕日を見上げながら、 緑の生い茂る広い公園のサイクリングロードを歩いていた」
などと書いてしまいますとかなり長くなりますし、読んでいる側からしても嫌になりますよね。

この辺りが情景描写の難しいポイントです。

簡単に書きすぎると情景がイメージ出来ない。
かと言って長々と書きすぎると、鬱陶しい。

これはどんなシーンでも起きてしまう、
小説が抱える矛盾点ですよね。

「これを完璧に解決する無敵の方法」というのは、
残念ながら存在しません。

長くなり過ぎず、でもイメージが出来るような表現を
書きながら探していくしかありません。

…とは言っても。

これでコラムを終えてしまったら、
「難しいけど、書いて体で覚えなさい」という
超体育会系なコラムになってしまいますので(笑)、
あくまで参考ではありますが、私が個人的に考えた、
「これならある程度までは解決できる」という方法を
ご紹介させて頂きます。

これはあくまで私が個人的に考えて使っている事ですから
絶対の正解ではありません。

「あ、これは使えそうだな」と思った部分だけ
取り入れて、少しずつ試して頂ければと思います。


【情景描写のポイントその1 ~動作の中に、情景を入れる~】

一つ目のポイントは「動作と組み合わせる」という事です。

例えば、
「僕は、彼女の手を取り歩き始めた。彼女はそっと微笑む」
という文章があったとします。

この場合は動作ばかりが書かれている為、
情景があまり浮かんでは来ませんよね。

ここに情景を表現する言葉を加えてみます。

 

例:

「信号が変わる。僕は彼女の手を取り歩き始めた。
 人ごみの中で、彼女はそっと微笑む」

 

こうしますと、「ここは信号の前で、人の多い場所」という情景の説明文を
あらためて書かなくても、動作を表す表現の中で、情景も表現が出来ています。

また、「人ごみの中で」という言葉を入れてやる事で、想像力が豊かな読者様であれば、彼女が微笑んでいる顔の背景に、ぼやけた人ごみがイメージ出来るかと思います。

映画で言いますと、
最初に挙げた「彼女はそっと微笑む」だけの表現は、
カメラは彼女の顔をアップで取っている状態
(スクリーンに映るのは彼女の顔のみ)ですが、
例で挙げた表現になりますと、カメラは少し引いて、
彼女の笑顔+ぼやけた背景(人ごみ)が映っているようなシーンになりますよね。

これ一行だけで見ると小さな違いですが
これが小説全編で書かれていますと、全体ではとても大きな差になります。

情景描写を、それだけで一行使うのではなく
動作のシーンの中に、一言・二言でも入れていくようにする。

これだけでそのシーンの連想の細かさが
随分と変わってくるかと思います。

 

【情景描写のポイントその2 ~描写の必要な表現かどうか見分ける~】

二つ目のポイントは、「そもそも描写の必要な表現かどうかを見極める」という事です。

例えば、高速道路を走っているシーンなどは典型的です。

これなどは、日本全国どこの高速道路でもよく似た景色ですよね。
同じような側壁があり、同じような標識があり、同じような街灯です。

違うのは、側壁の向こうに見える景色くらいです。

それならば、高速道路の様子には情景描写は必要がありませんよね。
「高速道路を走っている」と一言書けば、それで
イメージされるものは、ほとんどの読者様が同じです。

「学校の教室」も同じです。

私立の特別なコースの学校なら別でしょうが、
大抵の学校は、3~40人くらいの入れる広さに
机が並び、黒板と時計が前にあります。

これも読み手のほとんどの方が、よく似た風景をイメージされますので
黒板や机などは、あえて描写に入れる必要がありません。

逆に、「都会」や「都市」や「街」などは
かなり細かい描写の必要な言葉といえます。

一言に「僕は都会の中心を歩いていた」と言っても、
それが渋谷のようなゴチャゴチャとした所なのか、
地方都市の駅前くらいの雰囲気なのかがわかりませんよね。

そして、この雰囲気というのは
作品の今後の展開にも影響が大きいでしょうから、
是非とも、どのくらいの広さで、どのくらい栄えていて
どのくらい人がいるのか等の表現を入れておきたいポイントです。

「駅」や「公園」などの表現は、
「教室」「高速道路」と、「都会」「都市」の中間くらいの言葉になるかと思います。

「駅」というと、およその方がよく似たホームを連想されるものの、
やはり東京のド真ん中と、田舎の無人駅では随分違ってきてしまいます。

「都会」「都市」程に細かい表現は要りませんが
多少の補足くらいの表現は必要かと思います。

このように、
「単語そのものが、どのくらいの連想を沸かせる事が出来るのか」
を考えておく。
それが情景描写をスムーズに書くための大切なポイントだと思います。

ざっくりとですが私が個人的に使っている情景描写の方法をご紹介させて頂きました。

使えるところ、使えないところ等
色々あるかと思いますが、あなたの情景描写に
少しでもお役に立てれば幸いです。

是非、素敵な表現をこれからも書いていって下さいね。