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プロットの作り方 その3

不思議な事ですが、小説を思い浮かぶ瞬間というのは、
本当にタイミングがあると思います。

と言いますのも、小説というのは論理的に考えて「これが正しい」という
答えはなく、その時の気持ち、感情がとても重要になってくるものだからです。

(これは書き手だけではなく、読み手にも言える事です。
 「半年前に読んだ時はつまらないと思ったけれど、今読み返すと案外面白い」
 というような経験、おありですよね。これも同じです。)

私自身、実際にあった例でお話しますと、
ある時期、半年ほど小説の書けない時期がありました。
「ストーリーを盛り上げるなら、この構成だろう」と考えて
ロジックで小説を組んでいた頃です。

実際に書く作業の方もきちんとルール化して、「毎日○時から×時までは
小説を書く」と淡々と書く形を取っておりました。

この時に書いた作品ですが、少し時間を置いて見てみると
作品としては、そこそこまとまっているのですが、
どうにも感情移入が出来ない作品で、自分の書きたいものとは全く違ったのですね。

どうすれば書けるのかがわからなくなり、
「もう小説なんて書けないのかも知れない」と落ち込んだ事もありました。

しかし。

そう悩んでいた頃、ある日突然、小説が書けるようになったのです。

その日はちょうど土曜日で、前日に辛い事があったため
一人でカフェに来ていたのですね。

ぼーっとしながら、「どうしようか」と考え事をしていました。

ぼんやりとしているので考え方がまとまる筈もなく、
仕方なくその日の気持ち、感情をそのまま
文章にしていたら、それがそのまま小説になっていました。

 

半年間、考えて悩んで試行錯誤しても書けなかった物が、
とあるカフェで半日居座って書き続けるだけで出来てしまったのです。

こういう事が実際にあるのですね。
(いつも長居ばかりしているカフェのオーナー様には申し訳ないですが…)

 

そこにどんな違いがあったのか。

 

今思うと、その時の気持ちを正直に書けた(計算なしで書けた)かどうかに
よると思うのです。

私個人的な考えですが、
小説というのは、「その時の気持ちを瞬間冷凍したもの」だと思っています。

「盛り上がる小説を書こう」と思って
長い期間をかけて論理的に盛り上がる構成を組み上げて、それを方式通りに
並べていくと、とてもつまらない作品になってしまいました。

逆に、ある悲しい出来事があった日や、切ない想いをした日に、
その気持ちを素直に文章にした日は、とても良い物語
(二度と同じ物は書けないだろうと思うようなもの)が書けたりします。

「勢いだけ」と言われるかも知れませんが、実際にはそれも大切なのではないのかな、と思います。

 

物語は感情で出来ている物ですから、その時、論理的に「ああすれば盛り上がる」
「こうすれば受けが良い」と考えて書いた物には、感情がない分、
どうしても最後の最後で伝わるものがない作品になってしまいます。

 

また、感情も日に日に変わっていく物ですから、
物語を考える時、あまりに長い期間をかけて定期的に書いていく
(毎日○時から×時まで書く、といった)形ですと、
一番最初に「書きたい」と思っていた感情がどんな感じだったかを
思い出せなくなってしまう
のですね。

逆に、その時の気持ちを素直に、その気持ちを覚えている間に
一気に書き上げたものは、多少荒っぽくても、作品としてみると
とても伝わる物があります。

 

繰り返しになりますが、小説というのは、
「その時の気持ちを瞬間冷凍したもの」です。だからこそ、
文章は旬の間に書く事が大切だと思います。

よく「小説を書けるなんて凄いですね」と言われる事もあるのですが、
ある意味では、誰でも素敵な恋愛小説家になれると思うのです。

ただ、そのタイミングが決まっているだけです。

おわかりですよね?

そう。
失恋をした時です。

失恋をした瞬間に、すぐ文章を書こうと思う事が出来れば、
必ず良い恋愛小説を書く事が出来ます。文章力や構成力うんぬんではなく
純粋に良い話になる可能性がかなり高いのです。

ただ、失恋して悲しい気持ちも、その時は強い気持ちですが、
例えば1ヵ月後、2ヵ月後に全く同じ気持ちを持つ事が出来るかといえば、
それはやはり無理ですよね。

気持ちというのは、時間が立てば収まっていくものですし、
CDやDVDのように綺麗に再生する事は出来ません。

その時だけのものなんですね。

それを正にその瞬間に文章にして、瞬間冷凍できれば
それは誰でも素敵な作品になると私は思っています。

 

プロットの書き方も基本的に同じです。

プロットの場合、思い浮かんだら一気に最後まで駆け抜けるように
書き連ねていく方が自然です。

ストーリーの構成を考える場合、
どうしてもセオリーや盛り上げる手法に捕らわれて
計算しながら書いてしまう事もあるでしょうが、まずはそれを外して頂きたいんですね。

もちろん、物語ですから全体を見れば、計算も必要です。
ただ、それは「後から付け足すもの」だと考えています。


まず感情がメインにあって、そこに後から計算を付け足すのか。
まず計算がメインにあって、そこに後から感情を付け足すのか。

似ているようで、全く別物ですよね。

その時の気持ちをそのままに書いていく。
これがまず第一にあって、そこから後にプロット作りの手法の問題になるのだと思います。


小説はロジックではありません。

その時の気持ちを瞬間冷凍するためのものです。

時間が長くなればなるほど、気持ちと同じように
弱く、薄くなっていくものです。

 

思い浮かんだ小説(ストーリー)は、その気持ちが熱い間に
書けるだけ書いてみてください。
それは日に日に弱くなって行きますし、半年もすれば
もう同じ気持ちを思い出す事は出来ません。

今の気持ちをそのままに表現して、しっかりと形に残すようにして下さい。

それは今すぐ役に立つという事はないかも知れませんが、
小説創りの中では、いつか必ず役に立つ日が来ます。

こうした事の積み重ねが、小説家として物語を創っていく上で
大きな財産になるのではないでしょうか。

あなたが、あなただけの気持ちを表現した物語を生み出せる事を
心の底から祈っております。