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良い表現が浮かばない時の突破口

小説を書いていると、どうしても
表現方法で詰まる時がありますよね。

こういう時、頭を切り替えて、新しい発想を出せれば良いのですが、これがなかなか難しい…。

そんな表現に詰まった時、どうするか。

こういう時、いつも私が使うのは、
「一度日本語から離れてみる」という方法です。

といっても、いきなり「海外へ行こう」という訳ではありません。
必要なのは、英和辞典と和英辞典です。

例えば。

「見る」という言葉の場合。
ある文章を書いている中で、どうしても「見る」という単語では
しっくり来ない、というようなシーンがありますよね。

その時、どういう言葉を使うか。

本当に思い浮かばない時は、私の場合、これを一度、英語に変換します。

ちょっと具体的に試してみますね。

今、「見る」を和英辞典で英語にしてみますと。
see、look、glance、gaze、observe、watch…などが出てきます。

ある程度英語の得意な方であれば、
これらの言葉のニュアンスの違いがおわかりかと思います。

それぞれ、同じ「見る」でもニュアンスが違いますよね。

一つの行動に、これだけのニュアンスがあるんだなあ、という事がわかります。

そして、今度はこれらを逆に日本語へと戻します。
ここで英和辞典を使う訳ですね。

例えば、glanceという単語を日本語になおしてみましょう。

出てくる意味は、
「ちらりと見ること、 一べつ、一閃、かすめる、ほのめかす」などです。

ちょっと変わった単語が出てきていますよね。

例えば、「かすめる」や「ほのめかす」。

これは、普通に
「見る、という言葉の類義語は何だろうか」と日本語で考えていると
まず思い浮かびません。

特に「ほのめかす」などは、まず結びつきません。

しかし、この「ほのめかす」を使えば、そもそも「目で見る」という表現を
使わずに、全く別次元の表現に変えてしまうヒントになりそうですよね。

これです。

この方法の良いところ、
それは、「一度、日本語から離れる事」です。

私達が文章を書く時は、どうしても「日本語の枠の中」で物事を
考えてしまっています。

日本語として通じる事を前提にして、類義語を探してしまいます。

これを、他の言葉を一度経由してやると
そもそも日本語の類義語辞典では出てこないような、突拍子もない表現が
生まれてくる事があるんですね。

(もちろん、突拍子がなさすぎて使えない事も多いですが)

日本語の枠の中で考えていると、
「見る」と「ほのめかす」は、そもそも違う言葉です。

これを結びつけるのは難しいし、よほどの才能がある人でないと
この二つが結びつく事はありません。

しかし、よくよく考えてみると
確かに「見る」という文章を使う部分でなら、
ちょっと視点を変えたり、能動態を受動態に変えるなどの方法を使えば、
「見る」で書いていた部分を「ほのめかす」で表現する事もできますよね。

自分ひとりで延々と悩むと、時間がかかります。

こんな時、他の国の言葉を経由してやると、
これが案外簡単に出てきたりする事があるのですね。

こういう方法は、すごく特殊な事のように見えるかも知れませんが、
案外こういう考え方をしているプロも多いと思います。

 

例えば、B'zの稲葉さん。この方は、歌詞をまず英語で考えて、それを日本語に
翻訳して書いているそうです。

また、村上春樹さん。この方の文章では、時々
「これ、英語的な考え方をしてないと書けないよね」と
いうような文章が出てきています。

 

こういう、日本語では考えられないような表現が、他の国の言葉を経由すると出てくる事が多いので、本当に表現に困った時などは、よく使っています。

また、この方法には、もう一つ良い点があります。

それは、「何故こういう言い回しをするんだろう」と考えてしまう点です。

 

例えば。

日本語でいう「敬具」。
これを、英語になおすと、Sincerely yours という表現になります。

ちょっと面白いですよね。

Sincerely は、「心から」。
yours は「あなたのもの」。

そのまま訳すと、「心からあなたのものです」という意味になり、
意味がよくわかりません。

しかし、ちょっとニュアンスを汲み取ってみると、おそらく
「心からあなたの事を信頼しています。あなたの大切な友人の一人より」
というようなニュアンスが、この言葉の生まれた由縁なのかな、なんて事を
考えてしまいます。

(私は言語学者ではありませんので、単に予想でこういう事を言っています。
 詳しく、正しい由来はその道のプロの方に尋ねて下さいね)

こうして日本語にはない表現について
「どうしてこうなったんだろう」と考えていますと、
色々な理由が浮かんできますし、逆に、それを今度は自分の小説に
活かす事も出来ると思うのですね。

例えば、「敬具」と書いてしまうと
ありきたりすぎて感動を呼ぶ事は出来ませんが、
Sincerely yours のニュアンスを日本語でどうやって表現しようかと
考えていると、そこには新しい表現方法が生まれてくると思います。

普段、私達は日本語を使う事を当たり前に考えすぎていて、
それを意識する事は全くありません。

しかし、日本語で詰まった時こそ、あえて日本語から離れて他の国の言葉で考えてみると、
普段の発想では思いもつかないような表現が生まれてくる可能性があると思います。

たまには、今の枠組みの外に出てみる。

海外旅行と同じように新鮮で発見の多い方法なのではないのかな、と思います。

日本語で良い表現が見つからない時は、是非、お試し下さいね。