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マンネリ化しないための小説創作法

今回のタイトル「マンネリ化させない」について考える前に、ひとつ考えておきたい事があります。

それは、「小説に含む『理想』と『願望』の違い」です。

「理想」という言葉をご覧になって、どのように感じられたでしょうか。

「理想? 甘い事言ってるんじゃないよ」
という方もおられれば、
「確かにそうだよ、理想のない物語なんて意味がない」
という方もおられる事でしょう。

様々な意見がおありかと思います。

ただ、そういった議論や意見を交わす前に、
「理想」という言葉について考えてみたいと思います。

小説家が物語の中で書き込む「理想」。

それは、大きく分けて二つあるように思います。


一つは、「理想」という言葉を借りた「願望」。
もう一つは、本当の意味での「理想」です。

小説という創作は、一人の人間の文章だけで成り立つものですから、
どうしてもその人の願望や癖や、普段の考え方がモロに出てしまいますよね。

その中では、今の自分の状況や考え方だけではなく、
「いつかこうなりたい」という思いも、どうしても小説に現れてしまいます。

それはそれで正しい事ですから、特に問題ない事だと思います。

問題は、
「それが願望なのか、理想なのか」という点です。

小説を書く以上、「願望」ではなく「理想」で
ある方が良いのではないかと、私は考えています。

この違いが何なのか。「願望」になるのは、どういった場合なのか。

これは小説業界全体で正しいと言われている事ではなく、
私が個人的に感じている感覚ですが、
「願望」というのは、「こうだったら楽しいな」という思い、
「理想」というのは、「こうありたい」という強い想い。

こう考えています。

これがハッキリと出るのが、
現代物のサクセスストーリーや恋愛物、
そして冒険系のファンタジー作品だと思います。

もう少し具体的にお話しさせて頂きますね。

 

例えば、現代物のサクセスストーリーの場合。

主人公が会社を作り、ビジネスの世界で頑張っていくという物語の場合。
会社のメンバー同士で多少のトラブルはあるものの、
基本的には「皆で頑張っていこう」という物語。

これは、書き方にも寄りますが、「願望」に入るパターンの一つだと思います。

また、恋愛物の場合。
主人公と相手の方とで、多少のトラブルや喧嘩はあるものの
あくまで「いざこざ」のレベルであったり、ちょっとした喧嘩ばかりで
すぐに仲直りしている物語も同じです。
これも、「願望パターン」の一つかなと考えています。

ファンタジー系の場合はもっと顕著です。
例えば四人のパーティで冒険をしている物語ですと、
どの話でも常に四人がいて、いつも多少の喧嘩や意見の違いはあれど
いつも結果的には仲良く冒険している物語。

これなども「願望」の方に入るように思います。

 

では、これが「願望」ではなく、「理想」の方の
書き方・構成で書き上げるとどうなるのか。

これには様々な手法がありますので、完全な答えなどありませんが、
例えばとして、一番オーソドックスなパターンで考えてみたいと思います。

先ほど例に挙げました三つのパターンを考えますと、

<1>主人公が会社を作り、ビジネスの世界で頑張っていくという物語の場合。

 →例えば幹部が裏切って会社が潰れてしまうけれども、
  自分を信じて、もう一度新しいメンバーで立ち直るようなストーリー。
  

<2>ちょっとした喧嘩ばかりですぐに仲直りしている恋愛物の場合。

 →例えば恋した相手が亡くなったり、あるいは
  恋した相手と別れ、その人が他の方と結婚してしまったというストーリー。

<3>どの話でも常に四人がいて、いつも結果的には仲良く冒険している物語の場合。

 →仲間の一人が脱退したり、あるいは仲間が裏切って敵になり
  その後決して元に戻る事なく、敵として最後まで続くようなストーリー。

こういったパターンが例として考えられるように思います。

 

少しわかりにくい部分もあるかと思いますので、結論を申し上げますね。

要は、
「ストーリーが元に戻れない状況」である事と、
「その中でどうやって生きていくかという姿勢」が
表現されている事。

これが両方出来た段階で、「願望」ではなく「理想」の小説に
生まれ変わるのだと思います。

 

これは小説に限らず全てに言える事ですが、
私達はどうしても「安定」を求めてしまいます。

安定して楽しく生きたいという「願望」があるのですね。

小説で言えば、
「いつもと同じメンバーで仕事をする」ですとか
「素敵な恋人といつまでも過ごす」ですとか
「いつもの仲間と冒険する」など、
どうしても「現状維持」が前提となってしまいます。

これをしてしまいますと、
書いている側は、自分の求めている現状維持を表現できますから
書いていて非常に楽しい状態でいられると思います。

しかし。
読まれている方からすると、ストーリーが進んでも進んでも
いつもよく似たパターンが続くため、
不安がなく、面白くないストーリーになってしまうのですね。

「現状維持」を考えていると、どうしてもストーリーは平坦になってしまいます。

 

逆に、
「もう元には戻れない」という状況を書いてしまうと、
読者にも「現状維持はない」と言い切ってしまう事になりますから、
自然と不安が生まれ、この先がどうなるのかというドキドキ感にもつながります。

先がどうなるかわからない。だから不安になる。

こういった状況を作る。これが大前提です。


そして、「現状維持」の願望を捨てた、ここからが小説の勝負所です。

そんな「先の見えない不安」な状況の中で、
作者が「こうありたい」と想う、理想の生き方や姿勢、信念を
表現していく、それが小説なんだと思います。

 

そんな「先の見えない不安」の状況の中でどうやって生きていくのか。

ネガティブに生きていくのか、ポジティブに生きていくのか、
ドライになるのか、熱く生きるのか、それとも…。

どれも選んでも、問題ありません。
ここで選ぶあなたの選択が、小説でいう「理想」なんですね。


ここからが、小説家にとっての腕の見せ所であり、
あなたの思想(哲学)を表現できる場所でもあると思います。

ここであなたが選んだ生き方(理想)に共感される方は
あなたの熱烈なファンになりますし、
そうでない方は「イマイチな作品だったな」と言って去っていかれます。

(去っていかれると聞くと怖くなるかも知れませんが、
全ての読者から共感される小説など、この世にはありません。
あなたの生き方・哲学に共感される方がファンになる、
このプロセスが一番大切なんだと、私は思います)

 

これこそが、読者にとって
「ドキドキして、感動して、作者の生き方に共感する小説」なのだと思います。

それを作るために必要なのが、

1.「現状維持」(願望)を捨てる事
2.その後で、自分選んだ生き方(理想)を描く事

この二つなのではないかと思います。

 

 

少し極端な言い回しをしてしまうと、

「マンネリ化の原因は、現状維持の願望にある」と、私は思っています。

 

もしマンネリ化で悩まれた時は、ぜひあなたの書かれた作品を振り返ってみて、
「このストーリーは願望か、理想か。元に戻れるのか戻れないのか」
と考えながら、読んでいただければ、何かが見えてくるのではないかと信じています。

あなたの創作の、更なるレベルアップになれる事を心から願っております。