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長い文章を安定して書くための習慣

さて。今回のテーマは「長い文章を安定して書くには」です。

文字通り、長い文章を書き続けていますと
それだけの時間が経過していますから、当然、文章にはムラが生まれてしまいます。

私自身、友人のメルマガの文章チェックなども依頼されて行った事がありますが、
細かく読んでいくと、
「あ、ここで一回休んだな」
「ここで何日か空けたんじゃないかな」
と感じる部分が所々にあるものです。

実際、ご本人さんに聞いてみますと、
「文章が長いんで、3日に分けて書いたんだよ」
との事でした。

これ自体は普通の事なので問題ない事なのですが、
読み手から見て、「ここで文章のリズムや流れが変わってるな」と
気づかれてしまう場合は、少し改善が必要かも知れません。

今回は、そんな場合の、「長い文章を安定して書く」という
方法について考えてみたいと思います。

まず最初に。

私の持論になってしまうかも知れませんが、
長い文章というものには、必ず「継ぎ目」という物があると思うんですね。

「継ぎ目」として普段の生活の中でよく目にしますのは、
例えば衣服などがありますよね。

Tシャツで考えてみますと、
シャツ自体は一枚の布を人の身体の形にあわせて縫い合わせる訳ですから、
必ずどこかに「縫い合わせた跡」が残っているはずです。

試しに、いま私の着ているTシャツを見てみますと
両肩から首元にかけて、縫い合わせた跡があります。

他のシャツをいくつか調べてみましたら、
脇の下から腰へ向けて縫い合わせた跡のあるシャツもありました。

こういった跡は、ものづくりをする上では必ず
生まれてくる物ですよね。

建築などでは、特に「継ぎ目」が目立ってしまいますから
これらを上手く隠せるかどうかが、上手い職人さんとそうでない職人さんの
腕の分かれ目になっているとも言われます。

こういった「継ぎ目」ですが、
これは長い文章の中でもあるように思います。

例えば、1万字の小説を書いたとしますよね。

この時、一日で全てを書ける人はそうそういませんから、
何日かに分けて、積み重ねるように書き上げていく事かと思います。

そうしますと、一日目は元気でしたが
二日目は体調が悪かった、という事もあるでしょう。
あるいは、彼氏彼女と喧嘩をして怒っていたり、
上司に怒られてヘコんでいたりするかも知れません。

この時、「今日の自分の状態は、昨日の自分とは違う」という形になります。

これが文章にも大きな影響を与えてくるんですね。

本来なら、切ないシーンを書く時、その主人公の気持ちを(少しくどいくらいに)
しっかり書き込んで、感情表現を重視するタイプの作者さんがおられたとしますよね。

その方が、たまたまその日は体調が悪く、気分も落ち込んでいた場合、
本来しっかりと書き込むべきの「切ないシーン」が、
結構あっさりとした文章になってしまったりする事があるんですね。

この逆もしかりです。

「いつもならこうしてる」という
ご自身なりの「型」というものが、皆さんにおありだと思います。

しかしそれは、自分が落ち着いている場合の話であって、
普段とあまりにも違う状態の時は、無意識にその時の気分の影響を受けてしまいます。

これが普段のメールや、詩のように短いものであれば
あまり大きな問題にはなりませんが、長編小説や、長いセールスレター、卒論などのような
文章のボリュームが大きい場合、そのちょっとした「気分のムラによる文章の乱れ」はあちこちに表れます。

結果として、文章全体にムラが広がり、「まだら模様」のようになってしまうんですね。

これをどうやって防ぐか、と考えますと
方法は大きく二つあるように思います。

まず一つ目。

非常にシンプルではありますが、まず「常に同じコンディションで文章に向き合う」という方法です。

自分自身のムラが文章のムラになる訳ですから、
まず自分のコンディションを安定させておく事が、一番安全な方法ではないでしょうか。

感情があまりにも偏っている(悲しい時や怒っている時などの)場合は
一旦落ち着くまで、文章から離れるというのも一つの手法です。

(投資の世界には、「休むも相場」という格言があります。
 「調子の悪い時は無理やり進めようとせず、まず休みなさい」というシンプルですが奥深い格言です)

そして、いざ自分が文章を書こうという状態になったとしても、
そこからもコンディション調整は必要です。

次に必要なものは、「感覚のコンディション調整」です。

感覚や感性、文章への感受性などは日によって上下します。

(いつも一定という方も、少しはおられるかも知れませんが、
 私自身の経験では、実際かなりの上下があるように思います)

感度の良い日もあれば、鈍い日もあります。これらもなるべく
それまでの文章とレベルを合わせておく方が良いと思います。

具体的な方法としては、書き始める前に、それまでに書いた文章全て(無理でも出来るだけ多くのページ)を
一気に読み返すという方法です。

例えば、村上春樹さんの小説を読んだ直後に
自分が小説を書くと、どうも文体が「春樹っぽい」感じになった経験、おありではないですかね?

これと同じで、今の自分の感性を「昨日の自分の文章感性の状態にあわせる」という
調整を入れるだけで、見違える程に文章のムラは減少します。

身体と心、そして文章の感性の3つを、普段の状態へ合わせ込む事で
安定した文章へ大きく近づく事が出来るのではないかと思います。

そして、ムラを防ぐ二つ目の方法ですが
今度は逆に、「一気にデコボコをならす」という方法も考えられます。

先ほどご紹介しました方法を使ったとしても、人間ですから、
昨日と今日が完璧に同じ状態にはなりません。

あくまで「ムラが減る」というだけで、ゼロにはなりません。

こう考えますと、ある程度のコンディション調整が出来た状態であれば
そのまま最後まで書いてしまい、完成してからまとめて修正する方が効率としては良いですよね。

具体的には、文章が完成した後に
「なるべく一気に、一息で、休む事なく読んでいく」という方法です。

人間は、その時の自分の感性で「この文章はいい」「この文章は悪い」と判断します。

つまり、文章チェックそのものを何日にも分けて行ってしまいますと、
チェックする基準そのものが、日によってブレてしまいますので
チェックの意味が薄れてしまうんですね。

そのため、文章のムラチェックは、なるべく一気に、畳み掛けるように、一回で全文を行うのが良いかと思います。

ただし、先ほどの話と同じになりますが、あくまで
「チェックする日の自分の状態で判断したら、この文章はOK(あるいはNG)」
という手法ですから、チェックを一回だけにしてしまうと、
そのチェックをした日の自分の感性が色濃く反映されてしまいます。

一回のチェックは一気に行う必要がありますが、
決してそれ一回で済まさず、別の日にまた同じ事をして頂きたいんですね。

これが決定的に文章のクオリティを上げる事になりますし
何より、自分自身の文章のレベルを上げていく、一番の練習方法だとも思います。

以上のような考え方で長文を書いていく事で
文章全体に統一感が生まれてきますし、見えにくい文章ムラも減る事かと思います。

書く側は何ヶ月もかけて書きますが、
読んで頂く方は、数時間で読んでしまわれます。

ここにそもそも書き手と読み手の
時間感覚のズレがありますので、これを普段から意識して
コンディション調整を行う事が大切なのかも知れません。

今回のコラムはここまでです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

あなたの文章の更なる飛躍を、心からお祈りしております。