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小説の設定の活かし方

さて、今回のテーマは小説の「設定の活かし方」についてです。

小説における「設定」と言いますと、
どうしても主人公の性格や、登場人物の個性や、
あるいは服装、髪型、喋り方など、そういう点に目が行ってしまいがちですが、
今回の話題は、それ以外の設定についてです。

つまり、主人公やキャラクターの設定ではなく、
その人たちが生きている場所、時代、環境、時代背景など、人以外の部分ですね。

小説における「舞台」と言える部分についてです。

これらの設定は、小説を書く際、誰もがある程度は考える部分かと思いますが、
実際、「設定したは良いけれども文章の中で上手く活かすにはどうするのか」
案外難しいポイントだと、私も思います。

では、こういった「舞台」の設定をどう活かしていくのか。
それを私の知る範囲ではありますが、幾つか考えていきたいと思います。
 

 

 


【舞台設定の活かし方 その1:情景描写をリアルにする】

当たり前の話かも知れませんが、一番の活かし方はここです。
小説では、文章で語られていないものは、読者の皆様にもイメージが出来ません。

まず作者が、「ここはどういう場所で、どういう時代で、どういう環境なのか」を
語らなければなりません。

もしこれを省いてしまうと、読者の皆様からすると、
曖昧なイメージのまま、あるいは勝手に想像したイメージのままで物語が進む事になります。

これは是非とも避けておきたいですよね。

 

では、具体的にそれを書く方法はと言いますと。
 

例えば、作者が「時代は現代、場所は学校」という設定しか考えていない状態で
学校の青春ものの小説を書き始めると、どうなりますでしょうか?

学校の校舎はどういう色で、どういう大きさなのか、
体育館やプールはどこにあるのか、教室から見えるのか見えないのか、遠いのか近いのか、
下駄箱はどの辺にあるのか、そこは混雑しているのか空いてるのか(そこで雑談が出来るのか?)、
学校のまわりは人通りが多いのか少ないのか……。

色々な要素があります。

そして、こういった設定は、
学校へ歩いて行くシーンや、授業中に窓際からぼーっと外を見るシーンや、
体育の時間のシーンや、帰り際の下駄箱での会話シーンや、
学校帰りのシーンなどに、直接影響して来ますよね。

作者の設定づくりが曖昧ですと、これらのシーンの時、
どうしても細かく情景描写が出来なくなります。

つまり、曖昧な表現しか出来ませんから、
読者様もその場所にある「雰囲気」を感じられなくなります。

(例えば、舞台の設定を「東京の中心部にある、私立のエリート校」としておけば、
 それだけで、これらの設定はほぼ決まってきますよね。
 学校への通勤はほぼ全員が電車ですし、授業中の風景はオフィスビルか高級住宅街かです。
 体育館やプールが大きいはずはないですし、学校そのものも、そう広くはないでしょう。
 マンモス校と言われる程に人数が多くもならないでしょうから、下駄箱もそう混雑しないでしょうし、
 学校のまわりは、ビルが大半になるでしょうし、人通りも多いはず……。
 「東京の中心部にある、私立のエリート校」という設定が決まるだけで、
 これだけの情景描写がほぼ確定してしまいますよね)

 

このように、設定をある程度、具体的にしておくと
情景描写の文章を書く時に迷いが減り、文章がより具体的になっていきます。

それはつまり読者の皆様にとっても、「情景が浮かびやすい小説」となっていきますよね。

 

 

【舞台設定の活かし方 その2 :設定を心理描写に使う】

小説の舞台設定というのは、主人公の心理描写にも使う事が出来ます。

その最も多い例は、やはり「天気」です。
その日は、晴れなのか、雨なのか。

非常にシンプルな問いかけですが、案外、重要なポイントでもあると思います。
 

と言いますのも、
特に一人称の場合は、その日の天気を「どう感じるか」が
主人公の心理状態を表す表現になる
からなんですね。
 

例えば、嫌な事のあった日の帰り道のシーンがあったとします。

この場合、「僕は嫌な気分だった」と、直接的に表現してしまうのも良いですが、
ひとつのテクニックとして、天気への感想を文章に盛り込む方法があると思います。

この例で言えば、
「空は、普段見せない程の綺麗な青色をしていた。昨日の僕だったら、
 それだけで喜ぶ事が出来たのだろう」

「ビルを出ると、外は静かな雨が降り始めていた。
 僕は傘を持ってはいなかったが、そのまま駅へと歩き始めた。
 もう、雨を避ける気にもなれなかった」

などのような表現も考えられますよね。
 

三人称でも使う事は出来ますが、この方法が特に効果的なのは
やはり一人称だと思います。

一人称の場合、主人公の心の様子が、文章のセリフ以外の部分
全てに現れます。
そして、天気や町の風景を、「良い物」ととらえるか、「悪い物」と
とらえるかは、その日の主人公の気分であったり、
あるいは主人公の性格によって変わって来ます。

これを上手く活用する事が出来れば、
一人称で「僕は~な性格だった」という、自分で自分について
説明する表現を減らす事が出来ますから、より自然な文章につながっていく事かと思います。

 

 

【舞台設定の活かし方 その3 :「時代の空気」を醸し出す】

これは特にSFやファンタジー小説で言える事ですが、、
「その時代が一体どういう時代で、どういう出来事が起きているのか」
という設定は、ストーリー全体にとって重要なポイントになります。

SF、ファンタジーの世界ですと、
その時代が、戦争中なのか平和なのかによって
作品の目的や雰囲気が全く違う物になって来ますよね。
 

また、仮に戦争中という設定なのであれば、
一体どの国とどの国が、どういう理由で戦っているのか。

これが明確にならないと、ストーリーの結末も分りづらくなりますし、
主人公たちが「何のために戦うのか」という動機も曖昧になってしまいますよね。

SFやファンタジーで、特に戦時中のものを書く場合、
単に「Aという国とBという国が戦っている」という設定しかなければ、
ストーリーの深さが無くなってしまいます。

こういう作品を書く場合、
「なぜ戦っているのか」、「その原因は何なのか」、「解決策はあるのかないのか」
「A国とB国にはどういうイデオロギー(観念)の違いがあるのか」

……こういう設定がキチンと出来ていますと、
普通に出てくるキャラクターそのものが、その時代にあった考え方を出来るようになります。
(つまり、脇役ですら、「時代の流れ」を表現する重要なキャラクターに出来てしまいますよね)
 

また、主人公がそんな「時代の空気」に流されるのか、あるいは逆らうのかが
ストーリーの重要な点になりますし、主人公の魅力にもなるのだと思います。
 

これらはSF、ファンタジーでの説明ですが、
現代ものの小説でも、やはり「時代の空気」というのは
設定しておくに越した事はないと思います。
 

例えば、20代後半の男女の恋愛小説を書く場合でも、
その時代が、バブルのようにイケイケの時代なのか、あるいは今のように
不景気で、少し暗雲が立ち込め始めた時代なのかによって
出てくる脇役の性格や、街の雰囲気は大きく変わって来ますよね。

景気の良い時代の小説なら、
街は華やかで活気があり、脇役にも活発に動き回るキャラクターが増えるでしょうけれども、
逆に今のような時代を表現するのであれば、
さびれた商店街や閉店した店、職を失ったキャラクターなども出てくる事になります。
 

こういう「時代の空気」というのは、
小説の中で「この時代は不景気だった」と表現してしまうよりも、
むしろ「閉店した大型店」や「仕事を失った友人」などの設定を決めて、
それによって表現していく方が、
読者の皆様にとって、よりリアルな形で伝わっていく事になります。

そして、そんな時代の中で主人公がどうするのか。

時代にあった行動をするのか、時代に逆らうのか。

それが主人公の魅力にも関わって来ますよね。

「恋愛小説を書くのに、時代背景なんて必要ない」
と思われるかも知れませんが、実際には、脇役や背景の部分に
「その時代はどういう時代なのか」という設定が、大きく影響してくるように思います。

 

 


【まとめ】

小説の世界における「設定」というのは、
ストーリーそのもの程の注目を浴びてはいませんけれども、
文章の端々にどうしても表れてしまう、とても重要な要素だと思います。

設定マニアになる必要はありませんが、
頑張って決めた設定は、それを意識して文章を書き続けるだけで、
何気ないワンシーンの背景にも、その設定に基づいた文章が生まれてくるものではないでしょうか。

ストーリーの深み、世界観の構築などに
とても重要な要素だと思いますので、文章を書かれる際に、
少しでも思い出して頂ければ、これ以上の幸いはありません。

皆様の創作が、より良く変わって行かれる事を
心から願っております。