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比喩表現を上手く活用するには

さて、今回は比喩表現を上手く使うコツについて考えていきたいと思います。

まず、比喩表現について、簡単におさらいだけさせて頂きますね。

比喩表現には、大きく分けると二つの方法がありましたね。

そう。直喩と隠喩です。

直喩というのは、「まるで~のようだ」「~みたいに」等の言い回しを使って、
直接的に「これは例えですよ」とわかるように表現する手法です。

例文を幾つか挙げてみますと、
「彼女の人生は、まるでイチゴの乗ったショートケーキのようだった」
「窓の向こうでは、バケツを引っくり返したような大雨が続いていた」
などが考えられるでしょうか。
 

逆に、隠喩というのは、「~のように」「~みたいに」等の言い回しを使わず、
暗に例える表現手法です。

例文を挙げてみますね。

「彼女の人生はイチゴの乗ったショートケーキだった。
 しかし、自分の事ばかり考え続けている間に、いつしか大切なイチゴは失われていた」
 
 (この例文では、「イチゴ」を人生の中で大切な何か、という意味合いで
  使っていますが、「~のようだ」という表現を使わず、暗に示しています)
 

 

さて。
直喩と隠喩のおさらいを終えたところで、ここからが本題です。
 

比喩表現というのは、小説を書く上では
「小説家の腕の見せ所」的な意味合いがありますし、どうしても
こだわりを持ってしまうポイントでもあります。
 

ただし、比喩表現は一種のアクセサリーのようなものですから、
あまりに多すぎると、「うっとうしい」と思われてしまうのも事実です。

乱発するのではなく、大切にしたい文章にだけ
そっと使ってあげるのが、比喩表現を上手く使うコツの一つと言えるかも知れません。
 

 

また、直喩と隠喩をどう使い分けるかも重要です。

私の個人的な感覚で申しますと、
やはり隠喩はなるべく少なく、本当に「ここぞ!」という時以外は使わない方が良いと思います。
 

なぜかと言いますと。

直喩表現は日常生活の中でもよく使いますので、
読者の皆様も、ある程度の「慣れ」があります。

その為、直喩表現が多少続いていたところで、あまり大きな違和感は持ちません。

 

しかし、隠喩表現は日常生活の中で使われる事は、決して多くはありません。

また、表現そのものが、どうしても「詩的な感じ」になってしまいますので
隠喩が続く程、読者の皆様が「これはどういう意味だろう」と考える部分が増え、
結果として読み辛い文章になってしまう危険が大きいんですね。

ですので、あくまで直喩の方を多く、隠喩は「ここぞ」のタイミングでのみ
使用するのがベターかなと、そう考えています。

 

 

そして、次に考えてみたいのが、隠喩を使う時のちょっとしたテクニックです。

隠喩の難しさの一つとして、
「何の前置きもなく隠喩を使うと、読者の皆様に伝わりにくい」
という点があるように思います。

例えば、
「私の心のカーテンが揺れた」
という表現を突然書いたとしますと、これだけでは何の事かがわかりにくいですよね。

これは、書き手の側は
「カーテンは、隠喩としてこういう事を意味している」
と理解していますが、読者の皆様からすると、突然「心のカーテン」と言われても、
初見で書き手の意図を汲み取れる可能性が低いからです。

 

そのための解決方法として、
まずは隠喩で使いたい表現を、事前に直喩で表現しておくという手があります。
 

いわば伏線のようなものですね。
「この後、こんな隠喩を使いますよ。なので、今のうちに
 この直喩表現を見て、慣れておいて下さいね」
という前置き表現を入れておく手法です。

 

具体的にみてみます。

先ほどのカーテンの例を使いますね。

恋愛小説の中で、
主人公の女性は過去の体験が原因となって、
他人に対して心を閉ざしてしまっているとします。

この状況で、「心を閉ざす」というニュアンスを伝えるために
いきなり「心のカーテン」という表現を使うのではなく、まず直喩表現で前置きをしておきます。
(小説の前半か中盤くらいで使っておいた方が良いかと思います)

例えば、
「私は誰にも心を開けなくなっていた。まるで心に薄いカーテンを引いて
 相手をはっきりと見えなくしてしまったようだ」

というような文章でも良いかと思います。

こうして、「この作品では、心を閉ざす事をカーテンに表現しますよ」と
あらかじめ直喩表現を使って、読者の皆様に宣言しておきます。

すると、読者の皆様の頭の中で
「心」と「カーテン」がリンクされ、次からは
「カーテン」というキーワードがあると、主人公の心の壁を
連想するようになりますから、隠喩表現が伝わりやすい土壌が出来た事になります。
 

この土壌が出来ている前提で、小説の後半、非常に重要なシーンなどで

「彼の一言で、閉じたままのカーテンが揺れた」

という表現を出した場合、どうでしょうか。

 

前提になる直喩表現なしの場合に比べて、読者の皆様には
カーテンの比喩的な意味が伝わっているので、
「彼の一言で心が揺れたんだな」とすぐに理解が出来ますよね。

これは「読者と書き手の理解(カーテンとは何か)を合わせておく事で
後半の隠喩に余計な説明が要らず、隠喩の効果が高くなる」

という手法です。

応用すれば、

―カーテンが、揺らぐ……―

というような、詩的な表現も可能になるでしょうか。

カーテンが何かという前提があるからこそ、成り立つ詩的な表現と言えるかも知れませんね。
 

また、更に発展させていくと、既に読者の皆様の頭の中に
「心の壁=カーテン」という連想がありますから、「カーテン」という言葉を
使わずに表現する事も可能です。

例えば、友人の優しい言葉の後に

「わずかな隙間から、陽の光が射し込んでくる」

という表現も出来るでしょうか。

事前に連想さえ出来ていれば、この表現だけで
「カーテンの隙間(=自分の心の隙間)から太陽の光(暖かい想い)が射し込んで来る」
というニュアンスが伝わっていきますよね。

 

要は、隠喩というのは
書き手にとって難易度の高い技術でもあるのですが、
読者の皆様にとっても、難易度が高くなります。

その高いハードルを(お互い)クリアしやすくするために、
まずは直喩を使って、前提を説明しておく
(あらかじめ隠喩を使う事を前提に、そのために必要な土壌を作っておく)
という作業が効果的ではないでしょうか。

今回は色々と例を挙げながら説明してみましたが、
決して十分ではないと思いますし、比喩表現は特に数をこなしていく「慣れ」が必要な技術でもあると思います。

比喩の練習の中で、ちょっと悩んでしまった時、今回の内容を思い出して頂ければ幸いです。

今回も最後までありがとうございます。
あなたの創作の更なる発展を、心から願っております。