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初心者っぽさを消すための注意点

さて今回は、小説を書き始めて間もない頃に
どうしても出てしまう、「初心者っぽさ」をどのようにして、なくすかについて考えてみたいと思います。

初めて何かを始める時は、誰もが必ず「初心者」です。

それは別に特別な事でもなく、恥ずかしい事でもありませんから、
まずは自由に書き始めてみてくださいね。
(技術の向上も大切ですが、まず楽しむ事が一番大切ですから)

そして、その先のステップとして、
「もっとうまくなりたい、初心者っぽい感じが自分でもわかる」
と思った時に、この先でご紹介する方法をいくつか思い出して頂ければ幸いです。

 

まず、具体的な話に入る前に、
「小説」という分野の持っている特性(クセ)についてお話したいと思います。

小説というのは、当然、文字しかありませんから
マンガのように「目で見た瞬間に映像が見える」という事はありません。

読者の方が文字を読み、そのシーンを自分の頭の中で想像します。

その時、どういう風にシーンをイメージするかと言いますと、
当然ですが、実際の私たちのいる世界をイメージします。

マンガのようにシンプル化された白黒と線の世界ではなく、
実際、今あなたが目をあけて見ているような
色のついたリアルな世界として、小説のそのシーンをイメージする事かと思います。

ここがマンガと小説の大きな違いですし、
「初心者っぽい」文章の原因となる考え方がここにあると思います。

 

まずこれを踏まえた上で、文章の書き方を考えてみますね。
 

例えば。
ベタなシーンで恐縮ですが、小説の第一話で転校生の主人公が
初日から遅刻しそうになり、学校へ向かって走っているシーンがあったとしますよね。

こういうシーンで、セリフとして
「ヤバイよ、初日から遅刻なんて!」
と書いてしまうと、これは途端に「初心者っぽい」書き方になってしまいます。

なぜかと言いますと。

 

実際、言いませんよね、「ヤバイよ、初日から」とは。

街中を走りながら、ほかの人も道を歩いているのに、朝から知らない町で
しかも大声でこんな事……。

現実的ではないセリフですよね。

でも、マンガではこれが通用するんです。

マンガはシンプル化された世界ですから、絵のタッチとあっていれば、これは許されます。

ですが、小説には「絵のタッチ」のような雰囲気作りは難しい。

基本的には、文章を読んで、読者の方が自分の見ている(知っている)世界の中から
そのシーンに近い映像を選んできて、頭の中でそのシーンを想像します。

読者の方が、どういう世界をイメージするかを
小説では、書き手側でコントロールする事が難しいんですね。


ですから、小説の中で「現実的ではない」シーンが出てきますと
読者の方の頭の中では、そういったシーンがイメージ出来ない
(転校初日に「ヤバイよ!」と叫びながら走るシーンが、
 自分の体験のようにリアルには、イメージし辛い)
状態になるんですね。

ですので、例えばですが
こういった転校初日の遅刻シーンであるなら、
「声を出さない」ような書き方で進めるのも、ひとつの手かと思います。

具体的には、
小説の始まりのシーンをバスの中にして、満員の中で
主人公が時計を何度もチラチラ見ている。そんな中、バスは渋滞に
入り込んでしまって、一向に進まない。動かない車窓の風景に焦る主人公が
心の中で、(ヤバイよ、初日から……)と呟く。

 

こんな書き方であれば、実際にありえるシチュエーションですから
わりと読者の方も、その世界観に入りやすい形になるのではないでしょうか?
(少なくとも、マンガ的な要素はこれでなくなったかと思います)

基本的な考え方はこのような形になります。

こう考えていきますと、小説で「止めておいた方がよいシーン」というのが
いくつか浮かんできますよね。
(つまり、「現実的」ではない為に、読者の方が離れてしまう書き方が
 どういったものかが、見えてきますよね)

今、単純に思いつく分だけを挙げてみますね。

・「ハッハッハ、貴様の負けだ」系
基本的に「ハッハッハ」と相手に向かって高笑いする事って
人生の中で、ほぼあり得ませんよね(笑)。

 

・「ぎゃあああ!」「うわあああ」という叫び系

これも、怪我をした「瞬間」には叫びませんよね。
怪我をした瞬間は体が硬くなって、むしろ声は出ない(あるいは相当抑えられる)
可能性が高いはずです。こうした声が出るのは、怪我をして倒れた後、
しかも、呼吸器系や腹筋に大きな怪我がない場合は、声が出ますが
そうでない場合は声も出ませんよね。
侍が刀で斬られた瞬間に、「ぎゃああ」は、小説では「無し」だと私は思います。
 

 

・超スローモーション系

これは意外とやってしまう事が多いですし、実際、必要に迫られて
やらざるを得ない事もありますが、出来れば使う回数を減らしたい手法です。

超スローモーションのシーン、例えばでいいますと、
野球の試合で、主人公が打席に立ったシーンがあったとしますね。

この場合、ピッチャーが投げてきたボールが、実はカーブだったので
途中から急にボールが曲がり始めた。そのとき、主人公はすでにバットを
振り始めていて、心の中で「曲がった!? しまった、カーブか!」と叫ぶ。

結構ありがちなシーンですよね。
これも、「曲がった!? しまった-」と叫んでいる間に
ボールはすでにキャッチャーのミットに入っているはずですから、あまり現実的とは言えません。

ただ、スローモーション自体は、間違った事ではありませんので
要は使い方だと思います。

あまりにも極端で現実離れしたスローモーションの仕方は
止めておいた方が、リアルな小説になると思います。
(念のための補足ですが、通常のスローモーションは非常に重要な技術ですので
 キチンと使いこなす必要があると思います。「超」が付く程のスローは要検討、という意味合いです)
 

……いかがでしょうか。

これらの例からもわかる通り、
小説という分野は、案外、アクションもののシーンには不向きな面があります。

リアルな時間感覚で進める必要があるため、マンガのように
簡単にアクションを書く事は難しいのが実際です。

 

ただ、全く不可能という意味ではありませんし、
実際にアクションシーンを非常に上手く書いておられる作品も多数あります。

どうしてもアクションの多いシーンを書きたいという場合は、
そういった名作を参考にしながら、練習してみると、より良い作品になるかと思います。

また、「初心者っぽい感じ」をなくすための手法として
いくつかをご紹介してきましたが、実際にはこれだけではないでしょうし

何より、「実際に書いて考えてみる」という経験が一番、実力を高めてくれる事かと思います。

今回のコラムが、小説の創作に少しでもお役に立てれば幸いです。