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自分の癖と、得意なパターンを活かす

さて、今回のテーマは、小説を書く際に現れる「癖」や「得意パターン」についてです。

人間、誰しも癖というものがありますし、
得意な事、苦手な事は人それぞれに違っていますよね。

 

それは小説でも同じで、
同じジャンルのよく似た話を書いているのに、
Aさんの作品は独創性があって、惹きこまれるのに、
Bさんの作品はどうも違和感がある……。

 

小説の世界ではよくある事ですよね。

こういう事が何故起きるのかを考えますと、
文章の技術面や、背景の設定、世界観の有無など
数限りなく理由はあると思います。

ただ、今回のテーマにそってお話をしますと、
理由の一つとして
「自分の癖や得意パターンを知っていて、それを意図的に使っているかどうか」
があるのではないかと思います。
 
 
 

例えを挙げてみますね。

 
作家の村上春樹さん、彼の作品は非常に独創的で
読む人々の心を惹きつけますよね。
 
彼の作品の素晴らしい点は、人によって意見もわかれると思いますが
その「癖」や「得意パターン」を考えてみますと、どうでしょうか。
 
やはり特徴的なのは、
主人公がいつも「僕」と言われるナイーブな男性で、
ミステリアスな女性と恋に落ちて、最後に女性はいなくなる、
という典型的な「春樹パターン」とでも言うべきものがありますよね。

また、文章力の面で言えば、
やはり、あの英語的発想から創られる独特な比喩表現ですよね。
(他の人がマネをすると変な表現になってしまうのに、
 春樹さんが書くと素晴らしい表現になる……、本当に天才的な
 センスの持ち主なんだろうなと、いつも考えてしまいます)

 

こういった自分なりの特徴というのは、プロだけではなく、アマチュアも含めて
全ての小説家に、必ずあるものだと思います。

 

私自身がどうかと言いますと、やはりあるように思います。

癖として、作品を組み立てる時
どうしても主人公が女性になり、友人には「気の強いタイプの女性」が必ずいます。
(幾つかの例外もありますが、自分が創りやすい作品の傾向を考えると
 このようになって来ます)
 
基本的には、女性的な視点から作品を創っていくという癖があるようです。
 

また、文章の面から考えますと、
秋の終わりから冬にかけての寒い季節の表現が、他の表現に比べて
マシだと考えていますし、自分としても非常に書きやすい(書いていて楽しい)という
実感があります。

逆に、夏の熱い感じを表現するのは、かなり苦手です。
(それを克服しようとして、夏をテーマにした短編も一つ書きましたが……)

このように、
全ての小説家には、作品を創る時の「癖」があり、
文章面でも「得意なパターン」というのがあるように思います。

 

理想を言えば、やはり「何でも上手く書ける」というのが素晴らしいですし、
それを目指して努力する事も大切だと思います。

ただ、実際問題としては、
人間ですから得意なものと苦手なものがあるのは、当然です。

大切な事は、
「癖と得意パターンを知っていて、それを意図的に使う」事では
ないかと考えています。

 

村上春樹さんの例で言いますと、
読者の側は、例の「村上節」を読みたくて本を買う訳ですし、
「またこのパターンか」と思いながらも、そんな「僕(主人公)」の姿に共感します。

その癖や得意パターンのファンだから、
それを読みたくて、本を手にする訳ですよね。

これがもし、村上春樹さんが次々と新しいパターンを模索し、
自分の癖や得意パターンを捨て、全く別人のような作品ばかりを
書いていたとしたら、読み手の側も混乱しますし、村上春樹という人が
どういう人なのか、サッパリわからなくなってしまいますよね。

癖やパターンというものを、否定するのではなく、
まずは自分で受け入れてみる(認めてあげる)。

その上で、それらをどう使っていくか考えてみる。
それが、「自分らしさ」になり、いつか読者の皆様からも
認められる、あなただけの「得意パターン」になるのではないでしょうか。
 

 

では、自分だけの癖やパターンを見つけるにはどうするか。

これは意外と簡単だと、個人的には思っています。

 

方法としては、
「小説を書きたいな」と思った、その時に浮かぶストーリーで
小説を何本も書いていく事だと思います。

「読者の皆さんにこう思ってほしいから」
「こういう文章力を身につけたいから」
というような、書く理由が先にある小説ではなく、
単に「書きたいな」と思いついた作品。

それを何本も書けば、ある程度見えてくると思います。
 

と言いますのも。

書くための理由がある小説というのは、その理由が一番大切ですので
自然な自分の癖や得意パターンが優先されず、まずその理由を
達成するための書き方になってしまうんですね。

 

けれども。

何となく「書きたいな」と思った時に書き始めた小説は、
自分の本心、本質が求めている作品になりますから、
「自分にとって自然な作品」に仕上がっていく可能性が高いと思います。


そういった作品が一本だけでは判断出来ませんが、
それが五本、十本と積み重なっていきますと、
やはり似通ったパターンや表現が幾つも出てきます。

それが、自分の「癖」や「パターン」の根本になって来るのではないでしょうか。

「自分らしい小説」って何だろう。

そんな事に悩んだ時、今回のテーマについて
思い出して頂く事が出来れば、本当に幸いです。

あなたの創作が更に発展していかれます事を、心から願っております。