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作品の中で「成長」を描く

さて、今回のテーマは
作品を書く際に、是非とも意識しておきたい「成長」についてです。
 

小説を読んだ時に感じるものには色々なものがあります。

「ドキドキする体験」や「切ない気持ち」や
「(推理小説のように)知的に考える体験」や
「活躍する興奮」など、本当に様々な体験が小説の中にはあります。

ただ、
本当に感動できる作品の中に、いつもあるものは
何だろうかと考えてみますと、それは
「人間的な成長」なのではないかなと、個人的には考えています。

小説の中で、主人公達はそれぞれの人生を生きています。

主人公は人間ですから、その物語の中で、
私達と同じように、苦労や成功を繰り返して成長を経験します。

その成長の姿を見て
ある人は、自分の成長の経験と重ね合わせますし、
ある人は、「私もこんな成長をしたい」と思います。
 

感じ方は人それぞれです。
 

しかし、私達の人生の中で、
深い部分での「本当の歓び」を思い出すと、やはり
自分が成長した、変われた瞬間にあるのと同じように、
小説という作品の中で、本当に心の動く瞬間というのは
「主人公が人間的に成長できた事」の中にあるのではないかなと思います。
 

小説というのは、一人の人間の生き方を表現するものです。

せっかく一人の人間の生き方を表現するのですから、
その中には、「日常の繰り返し」や「よくある出来事」を表現するのではなく
「人生を変えるくらいの経験と、そこで感じた事」、
そしてそれによる「人間的な成長」を描いて行くのが
作品としても素晴らしいものになるのではないかなと考えています。

とは言っても。

一言で「人間的な成長を表現しましょう」と言っても、
具体的に、「どう書けばそれが表現できるのか」は難しいものです。

私自身も、「これなら絶対出来る!」という答えを
持っている訳ではないですが、今考えられる方法を
少しでもご紹介できればと思います。
 

 


【作品の中での「人間的成長」の表現方法】

「成長」というものを書くには
必ず考えておかなければならないものが3つあります。

それは、
①成長の前後で何が変わるのか
②どういう体験でそれが変わるのか
③その成長で、「あなた(作者)が何を伝えたいのか」

です。

順に説明させて頂きますね。

 

 


①成長の前後で何が変わるのか

「成長するんだから、変わるだけで良いんでしょ」と
お考えの方もおられるかも知れませんが、
一言で変わると言っても、内容は様々です。

人生の中で、人が変わるものは
「性格」や「考え方」などが多いかと思いますが、
他にも、「態度」や「立場」「言葉遣い」「人間関係」「理想(目指すもの)」
など、挙げ始めれば際限なくあります。

必ず一つである必要はありません。

これらの幾つかが変わる事で、その人の成長を
表現する事が出来るようになります。

また、作品のジャンルによっても、
これらの表現がし易い分野とそうでない分野があるように思います。

例えば、歴史ものやファンタジーのような分野であれば、
「理想」や「立場」などは、自分の考え方が変わると
必ずそれにあわせて変えておく必要があると思います。
(これらの分野では、その主人公の立ち位置は、
 自分の価値観によって決まっています。価値観が変わったのに
 立場がそのまま、というのはあまり多いパターンではないように思います)

また、恋愛もので言えば、
「立場」などを変えるのは難しいケースが多いですが、
逆に「人間関係」や「態度」などを使う事で、強烈に変化を表現する事が
出来るようになると思います。

自分の書いている小説の分野によって
大きく異なってしまう部分かと思いますので、ここは
よく考えた上で設定を決めて行きたいポイントではないでしょうか。
 

 

②どういう体験でそれが変わるのか
 

人生の中での「人間的な成長」というのは、
体験なしに変わる事は、あまり多くないのではないかと思います。

よく、人生哲学やビジネスの本でもありますが
「人との出会いの中にこそ、答えがある」というのは
ある程度正しいと思います。

自分の事を一番知っているのは、自分ですが
それに気付くためには、誰か他の人の言葉や、その人達と過ごした
時間(体験)が大きな要素になると思います。
(自分で自分を見つめて、一人で考えて気付く事もありますが
 それが完璧に出来る人は、そう多くはないと思います)

その「体験」の内容は、やはり作品の中で
矛盾なく起こるものでなければなりませんし、
それが「自分の変化(成長)」にキチンと結びつくものでなければなりません。

(例えば、
 大切な人を失った、という体験を通して
 「人との繋がりの大切さを知り、自己否定をしなくなった」
 という成長はあり得ると思いますが、
 逆に、大切な人を失って「明るい性格になった」というのは
 よほど特殊な状況でない限り、そうそう起こるものではないと思います)

この「成長の元になる体験」というのは
ストーリーの中でも最も重要なシーンになりますし、
この前後の変化が作品の中核にもなりますので、じっくりと考えて
創って頂きたい内容だと思います。

 

また、ここが作者の最も個性の出る部分でもありますから、
もし可能ならば、あなたの実際に体験した内容(あるいはそれに近いもの)を
表現して、その前後の変化も、あなたの体験したものにする事で
作品がよりリアルで、読者様と共感しあえる作品になるのではないかと思います。

(あくまで、「可能ならば」です。必ずそうして下さいという意味では
 ありません。自分がその体験を人に伝えたいと思った時のみ
 使うようにして下さいね)
 

 

③その成長で、「あなた(作者)が何を伝えたいのか」

極論してしまいますと、
小説という作品は、あくまでツールの一つです。

作品を通して、あなたの思いや価値観を、
読んで下さる皆様へ伝えるためのものだと思います。

本質を考えれば、
作品そのものが大切なのではなくて、
そこに込めた、あなたのメッセージや思いが一番大切です。

作品中での、「人間的な成長」は
あなたの伝えたいメッセージが最も強く表れる部分でもありますし
これが読んで下さる方の、心に届く可能性が高い部分でもあります。

そのため、作品で表現する「成長」は
あなたの伝えたい内容とリンクする必要があると思います。
 

 

例えば、
「前向きに生きよう」というメッセージを伝えたいのであれば、
①や②で説明しました内容を、
「後ろ向きな主人公が、何かしらの体験を通じて
 前向きに考えて生きようとし始めた」という内容にしなければ、
あなたのメッセージは上手く伝わりません。

この③の内容は、
あなたが「何の為に小説を書くのか」という部分を
ある程度ちゃんと考えていないと、決まりにくい部分かと思います。

これが一つのきっかけになって、
ゆっくりでも構いませんので、「私が伝えたいのは、何だろうか」と
少しでも考える機会になれれば幸いです。
 

 

……いかがでしょうか。

抽象的な内容が多くなってしまいましたので、
全てを理解して今日から始める、というのが難しい部分もあるかと思います。

ですが、小説を書いていく上では是非とも一度、考えてみてもらいたいという思いで長々と書いてしまいました。

もし今日の内容に少しでも共感頂けたなら、今日から、ほんの少しだけで結構ですので
思い出して、ちょっと考えて頂けたら…、そんな形でお役に立てれば本当にこれ以上の幸せはありません。

あなたの創作のお役に立てる事を心から願っております。