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長編を書く時の重要なチェックポイント

今回は、長編小説を書く時に必要となる技術的なテーマをお伝えしたいと思います。

長編小説を書く時に、最も気をつけておきたい点は大きく二つあると思います。

それが、

1.文章の品質を均一にする
2.登場人物の性格や考え方に、緩やかな変化を付ける

の二点です。

それぞれ順にお伝えさせて頂きたいと思います。

 

1.文章の品質を均一にする

長編というのは、書く方にとっても非常に長丁場です。
学校へ行きながら、あるいは働きながら、帰宅後に小説を書いておられる方の場合、
数百ページの作品を書こうと思うと、どれ程速い方でも
やはり数ヶ月の時間はかかるかと思います。
こういう場合、問題になるのは
「書き始めの頃と、最終話を書く頃との間に、時間的な隔たりがある」
という点です。

私たちは人間です。機械のように、いつも同じ感覚で、
同じ感受性、同じスピード、同じレベルで文章を書く事は出来ません。

嫌な事があって繊細になっている日もあれば、
面倒くさくて適当な気分になってしまっている日もあります。
しかし、長編小説はそんな日でも、毎日書いています。
そうしますと、長編小説の中で、
「第一話を書いていた日は気分が良かったが、第五話を書いていた日は
嫌な事があってナイーブになっていて、最終話を書いていた日は
疲れて適当な気分だった」
という状況が生まれます。

作者の気持ちや状態は、文章にそのまま影響します。

本人も気付かないうちに、
「第一話は陽気な文章、第五話は非常に繊細な文章、最終話は適当な文章」
という状況になってしまうんですね。

書く方はそれで良いかも知れませんが、
読んでくださる方の中には、一気に数日で全て読んで下さる方も
多くおられます。

そういった素敵な読者様からしますと、
「文章が進むにつれて、途中でいきなり繊細になったり、最後の方で
いきなり適当な文章になったりする」という、
非常に読み辛い感を抱いてしまうんですね。

 

これは長編小説にとっては致命的です。

最終話の一番盛り上がるところで、意図的に繊細な文章にする、という
計画的な文章の変化ならOKですが、「作者のその日の気分で繊細になる」
という事態は、どうあっても避けたいポイントです。

これを上手く回避する方法は、
読者様と同じように、「一気に全編を読み返す」という方法が
シンプルですが最も効果的です。
自分が読者様の気分になって読んでいく事で
作品の中の「文章のムラ」が見えてきます。そういうところを
より全体にあわせ込む形で修正していく作業が必要です。

私の個人的な感覚では、どんなに長い小説であっても、
書き上げた後に最低4、5回は「文章のムラのチェック」のためだけに
読み返す必要がある
と思っています。
そして、文章の品質という点で言えば、
もう一つチェックしておきたい点があります。


それが、「送り仮名の付け方」です。

 

例えば、「見積もり」と「見積り」などが代表的ですよね。
あなたは普段、どちらの言葉を使っておられますでしょうか。

ちょっと調べてみたのですが、厳密には
「どちらでもいい」という言葉が結構沢山あるんですね。

文化庁のホームページに、「国語表記の基準」という
書き方例が出ているのですが、そこでも
以下のような例は、「どちらでも構わない」という方針が出ておりました。

「雨上がり」と「雨上り」
「乗り換え」と「乗換え」
「向かい合う」と「向い合う」
「打ち合わせ」と「打合せ」「打合わせ」
「申し込み」と「申込み」

こういう例の場合、どちらを使うかは個人の判断ですので
私としては、どちらでも構わないと思います。

しかし、気を付けておきたいのは、
小説の書き始めの頃は「雨上り」と記載していたのに、
最後の方になると「雨上がり」と書いてしまっていた、という例。

これは文章のムラになりますから、是非とも避けておきたいポイントです。
しかし、実際は長い小説の中で
一言一句、全てを調べていく訳にも行きませんよね。

では、どうやってこの送り仮名の問題をクリアするのか。

100%クリア出来る訳ではありませんが、
私なりの方法をご紹介させて頂きたいと思います。
(あくまでご参考として考えて頂けると幸いです)

1.まず文章を書いていく際に、漢字変換で
送り仮名の振り方が二つ以上出てきた言葉はノートにメモしておく。

2.なるべく自分で「雨上がり」ではなく、「雨上り」と書くと意識する。

3.全てを書き終えた段階で、メモしたノートを見る。

4.ノートにある言葉を一つずつ、ワードや「メモ帳」の「検索」機能や
「置き換え」機能を使って全文検索していく。ムラがあれば直す。

 

こういう方法を使う事で、ある程度はムラを直す事が出来ると思います。
もちろん、もっと良い方法があると思いますので
ご自身が書いていかれる中で、試行錯誤して頂ければと思います。

ここまでが、「1.文章の品質を均一にする」というテーマです。

 

 

 

2.登場人物の性格や考え方に、緩やかな変化を付ける

そして次が「2.登場人物の性格や考え方に、緩やかな変化を付ける」というテーマですよね。
これは文章の書き方ではなく、ストーリーの創り方や設定の方法の問題です。

長編小説のように長い時間をかけて書く場合、
主人公や脇役の性格・言葉遣いにも先ほど挙げたような
「均一さ」は必要です。

(文章が進むにつれて、主人公の性格がコロコロ変わっては気持ち悪いですもんね)

まずは均一である事が大前提です。

しかし、小説を面白くしていくポイントを考えますと、
均一さの中にも、変化が必要です。

小説というのは、ある意味で「人間の成長と変化を表現するもの」だという
感覚が私には(個人的に)あります。
例えば、人を信じる事を拒んでいた、自分の殻に篭る主人公が
多くの人と出会う中で心境が変化し、いつしか人を信じられるようになる、
そんなストーリーの場合を考えますと。

まずは最初の「信じる事を拒む」の時点では
人を受け入れないような性格・セリフ、態度を
常に書かなければなりません。

そして最終話の辺りでは逆に、「人を信じる」という性格・セリフなどを
きちっと表現しなければなりません。

ここに均一さ(統一感)が必要になります。

そして、変わり目の間だけが、その両方を見せるような書き方を
する事になりますよね。

こういう変化がストーリーを面白くしますが、長編の中でついやってしまいがちなのが、
「いつも同じ性格・言動で、主人公達に変化がなく最終話まで行く」
というパターンです。

(先ほどの例で言いますと、人を信じない主人公が
色々な事件を解決していくが、結局最後まで、性格も考えも変わらないという形です)
これは確かに、書く方からしますとやりやすいのですが
ストーリーの盛り上がりや、感動の面から考えると
いまいち面白みに欠ける形になりがちです。
(小説が長くなる程、マンネリに見えてくるのですね)

もちろん、全てがそうではありませんし
同じキャラクターのまま、非常に面白い小説を書かれる方も多くおられます。

しかし、小説のレベルアップをしていきたいと思う場合は
是非、主人公や脇役達が、大きなストーリーの流れの中で
少しずつ変化していく様子を書いて頂きたいなと、心底思っております。

 

<まとめ>

長編小説には、短編以上に難しい部分が多くあります。

その一つが、文章の均一さ。
気分による文章のムラがないかどうか、送り仮名のミスによる
文章の質の低下はないかどうか。

長い文章全てをチェックする大変な作業をしていかなればなりません。

そして同時に。

長編という長いストーリーの中で、
「人間の変化」というものに、是非トライをして頂ければと願っています。

文章は均一に、しかしキャラクター達は
少しずつ、大きな流れの中で変化していく。

こういう作品を生み出す事が、長編小説のレベルアップのために
大切な事の一つなのではないかな、と思う今日この頃です。

あなたの小説の創作に、少しでもお役に立てれば幸いです。