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セリフの使い分けの例

さて、今回のテーマは「台詞の使い分け」についてです。

小説を書く際に、一番キャラクターを出しやすく
一番面白い部分が、やはり台詞の部分です。

しかし、これが難しいのも事実ですよね。

映画や演劇と違い、小説の台詞部分は純粋に文字しか情報がありません。

顔が見える事もありませんし、声が聞こえるわけでもありません。
 

という事は。

一つのセリフが書かれていた時、それが「誰の言った台詞なのか」が
非常にわかりにくい。これが、小説の特徴ですよね。

 

これは私の個人的な考えですが、
「読みやすい小説」というのは、台詞の使い分けが非常に上手く出来ているなと思います。
 

と言いますのも、
読者様は台詞の部分を読む時、やはりその光景をイメージし
主人公や脇役が喋っているシーンを思い浮かべておられます。

この時に、「この台詞は誰が言ったのかわかりにくい」と感じてしまいますと
そこで一旦、連想が停止して、「これは誰だろう」と考えてしまいますよね。

こうして考えている間は、小説の光景の中に
どっぷり浸る事が出来ず、一度「冷める」事になります。

これはもう、小説書きとしては致命傷な状態ですよね。
(私もこれが非常に怖いものですから、誰の台詞かという点には
 細心の注意を払うようにしています)

 

 

では、それを具体的にどうするのか。

方法は幾つかありますよね。

最も簡単なものとしては、台詞の後に
「と、彼女は言った」のような「~が言った」という説明をつける事です。

しかし、これも既に小説を書いておられる方なら
誰もが感じておられる事かと思いますが、
「~が言った」が何度も何度も出てくると、それだけで
くどい小説となり、リズムが悪くなってしまいます。
 

 

そのため、私が意識しているのは、
「言葉遣いそのものを分ける」という方法です。
 

簡単な例を挙げてみますと、
AさんとBさんの会話があった場合は、以下のようになります。

A「そうですか。困りましたね」
B「でしょ? 本当ムカつくんだよね、あの先生」
A「でも、どうします?」
B「知らないわよ。こっちが教えてほしいくらいだわ」

上記のような場合、「~が言った」という説明を全く
抜きにしても、Aさんは敬語で、Bさんが普通の言葉遣いですから
絶対に混同する事はありません。

 

ここまで簡単なら話は早いですが、
実際のシーンでは、同年代の女の子同士の会話などもありますよね。

この場合、片方が敬語を使う訳にはいきません。

そういう時は、もちろん「~が言った」を使いますが、
なるべく言葉遣いそのものを変えて、文字を見るだけで
何となくでも違いがわかるように表現を行う必要があると思います。

先ほどの文例で言えば、以下のような表現も使えるかと思います。

A「そう……。ちょっと、困るね」
B「でしょ? 本当ムカつくんだよね、あの先生」
A「でも、どうしたら良いかな」
B「知らないわよ。こっちが教えてほしいくらいだわ」

あくまで一例ですが、
上のような表現にしますと、Aさんの方が弱い表現を多く使っており、
Bさんは徹底して強い表現を続けています。

こういう形にしますと、「Aが言った」「Bが言った」を
使わなくても、ある程度どちらが言ったかを把握する事が出来ます。

 

これは、全ての言葉に対して言える事で、
キャラクターによって一つ一つの言葉遣いを変えていく事が十分に可能だと思います。

例えば、「そうだ」という言葉ひとつを取ってみても、
表現の方法は以下のように沢山の種類が思い浮かびます。

1.そうよ
2.そうなの
3.そうなのよ
4.そうね
5.そうだわ
6.そうじゃないかな
7.そうじゃないかしら

3のように、上から物を言っているタイプの言葉もあれば、
6のように、いつも自信無さげなタイプの言葉もあります。

「どの言葉を使えば、そのキャラクターに一番あっているか」を
考えながら選ぶようにすれば、どんな台詞でも、
そのキャラクターである事を示す事が出来るかと思います。

(つまりは、誰が言ったかを説明しなくても良くなりますよね)

 

ただし、これを実際にやろうと思いますと、
まず大前提となる条件があります。

それが、「キャラクターのタイプがかぶっていない事」です。

強気なキャラと弱気なキャラ、
いつも積極的なキャラと消極的なキャラ、
偉そうなキャラと控えめなキャラ……。

こういったタイプの違いがあって初めて
言葉による使い分けが可能になります。

逆に、強気なキャラ同士の会話などでは
どうやってもキャラがかぶってしまって、「言葉による区別」が出来なくなってしまうんですね。
 

文章表現で使い分けるためには、
その前に設定そのものを、キチンと分けておく事が大切です。

設定に違いがあるからこそ、文章で違いを生む事が出来る訳ですね。
 

 

ただし。
これを使う時の注意点を一つ、追記しておきたいと思います。

それは、何事にも言える事ですが「やりすぎない」という点です。

例えば、セレブな家に育った子がいたとしても、
「私は、そのような安い物には興味がございませんですわ、おほほ」
なんて表現は絶対にNGです。

冗談のようにも聞こえますが、実際、
ネット上で小説を見て行きますと、結構これに近い表現を見かける事があります。

キャラクターの設定から区別する事は必要ですが、
区別をしすぎると、キャラクターや言葉遣いが極端になってしまい、
急にリアリティーが無くなってしまいます。

小説は特に「やりすぎ」が発生しやすい分野ですから
さじ加減にはいつも気を遣うようにしてみて下さいね。

 

言葉遣いは、その人らしさを表す一番の方法です。

じっくり、慎重に選びながら
一番「その人らしい」言葉を選ぶように気を配って頂ければ、
きっと読みやすくて素敵な小説に仕上がる事かと思います。

台詞の部分はついつい勢いで
書いてしまいがちですが、一度ゆっくりと考えてみて下さいね。
 

あなたの小説のお役に立てれば幸いです。