文章力を上げる 独自性を出すには

表現方法のアイデア出し例

投稿日:02/18/2012 更新日:

さて、今回は小説のストーリーや構図ではなく、文章そのもの、表現についてのお話です。

皆さんも実体験から感じておられる通り、
文章表現というのは、本当に多くの書き方がありますから
どれが正解と言うものもありません。

確実に正解という書き方がないという事はつまり、
「最初に思い浮かんだ表現が一番良い表現だとは(ほぼ)言えない」
という事ですよね。

沢山の文章を書いていると、当然そうなります。

一番最初に浮かんだ文章が、いつも一番良い表現のはずはありません。

やはり考えて書き直して、また検討して、また直して……
こうして文章の精度が上がっていき、
それでも迷いながら、最後に残った幾つかの表現を見比べて「これでいく!」と選ぶ。

 

 

本当に良い文章を書こうとすると、
こういった「幾つかの文章を比べるクセ」が大切です。

 

 

これが小説の難しい点でもあり、醍醐味でもあるんですけれども、
あくまでこれは「幾つかのパターンでの候補を出す事が出来た」状態が
前提になっています。

幾つかの候補から、「これだ」というものを選ぶのも難しいですが、更に難しい事があります。

 

それが、そもそも前提になっている「幾つかの候補を挙げる」という事です。
例えば、書きたいシーンが一つあったとします。

まずはこれを主人公の視点で表現しますよね。
でも、何だか気に入らない。
そう思ってしまったら、次は違う視点、違う表現で書き直す事になります。
ここで難しいのが、「そのアイデアが出るかどうか」です。
 

小説家にとって、発想力が試される瞬間でもあります。

私自身も、なるべく頭を柔らかくして発想が浮かぶように
しようと努力はしているんですが、なかなかこれが難しい……。

人間ですからね。いつも最高の状態でアイデアを出せるとは限りません。

 

そこで、こういう「表現が思い浮かばなくて困る」という時は、
いつも決まった方法を使う事にしています。


それが「能動態と受動態の両方で考える」という方法です。

「……なんか難しい言葉が出てきたぞ」と
思ってしまわれた方もおられるかも知れませんね。

あるいは「昔、聞いた事があるけど何だっけ」という方も多いでしょうか。

これは、中学の英語で習う表現の方法でしたよね。
(確か、中学2年で習う内容だったかと思います)

念のため復習をかねて、能動態と受動態を簡単に説明させてもらいますね。

 

【復習講座 :能動態と受動態】——————————————

能動態と受動態というのは、主語(その文章の主人公)を
逆にして考えるという文章表現です。

まずは例を挙げてみます。

例1(能動態) :I like him. (私は彼が好きです)

これが能動態とすると、受動態は以下のようになりますよね。

例1(受動態) :He is liked by me. (彼は私に好かれている)

それぞれの文章が、「私」を主語にするのか「彼」を主語にするかで
文章の構図が逆になっています。

この文章では「私」と「彼」しか出てきませんので2パターンでの書き換えしか出来ませんが、
ここに目的語(対象となるもの)が出てくると、3パターンでの書き換えが出来ます。

例2(能動態) :I taught him English. (私は彼に英語を教えた)

これを受動態に変えると、以下のような書き換えが出来ます。

例2(受動態) :He was taught English by me.(彼は私に英語を教わった)

例2(受動態) :English was taught him by me.(英語は私によって彼に教えられた)

上のように、今度は「私」と「彼」と「英語」の
それぞれが主語(主役)となる文章が書けますよね。

これが能動態と受動態です。
要は、「この文章の主人公は誰か」を、視点を変えて書き換えるという方法です。

【復習講座ここまで】————————————————–

 

 

……中学の頃、こういう事を勉強されましたよね。

日本語は普段、あまりにも使いすぎている為、
なかなか「この表現は能動態だ」と意識する機会がありません。
しかし、英語を学ぶ上では、嫌でもこういう「態」を意識せざるを得ません。

「これは能動態か、受動態か」と意識して書かざるを得ないんですね。

この「言葉に対する意識」が、日本語表現のアイデアを出す時に重要になります。

 

日本語で文章を書いている時は、スランプに陥っても
「何か良い表現ないかな」と漠然と探す事になります。

この時出てくるアイデアの多くは、
「激しく」や「明らかに」や「とても」等の
修飾語を変えるタイプか、
「走る」を「駆け抜ける」に変える、「笑う」を「微笑む」に変える等の
動詞の言い回しを変えるタイプがほとんどです。

これらはあくまで、
「今の文章の構図を維持したまま、言い回しだけを変える」
という方法です。
 

これでは、今の文章にプラスアルファは出来ますが、
今の文章を根本的に変える事は出来ません。

逆に、ここで英語的な考え方を持ち出して、
「能動態になっている文章を受動態に変える」という方法が活きて来ます。

これを使うと、主語を変える訳ですから
今の文章の構図そのものを変えてしまう事になります。

 

ちょっとわかりにくいかも知れませんので
実際に私が文章で迷って、「受動態」を使う事で解決した例をご紹介させて頂きますね。

今書いている小説の中で、
主人公が友人に言われた一言で、キレてしまったというシーンがありました。

このシーンを、当初は
「私は、彼の最後の言葉で一線を越えてしまった」
という表現をしていました。

 

しかし、自分で読んでいても、どうもしっくりと来ないんですね。

「一線を越えて」という表現を色々なパターンで
書き換えてみましたが、どの言葉を使っても、やっぱり納得がいかない。

この時、「文章そのものを変えよう」と思い、
文章を受動態にしました。そうすると、以下のような文章になりました。

「彼の最後の言葉が、私に一線を越えさせた」

上の表現では、文章の主人公が「私」ではなく
「彼の最後の言葉」になっています。

文章の視点が変わっていますよね。

 

 

……これが正しいとは言いませんが、
私的には非常にしっくり来ましたので、この文章を採用する事にしました。

この発想は、「私」を文章の主語にしている間は
どうあがいても思い浮かぶ事はありません。

今の文章の構図を逆転させて、
主語(主人公)自体を変えてしまうという方法を使えば
今の文章そのものを変える事が出来るかと思います。

ちょっとややこしい話になってしまい恐縮ですが
是非じっくりと考えて試して頂ければと思います。

文章のアイデアが出ずに困っておられる時は
是非一度、お試し頂ければ幸いです。


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