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言葉はその人の価値観を表す

4月は、どこの学校や会社でも、新しく入ってこられた方々の挨拶を頻繁に聞く事になる季節ですよね。
こういう挨拶や自己紹介を何人分も聞いていますと、

なかには「上手いなあ」と思う方や、「この挨拶、どうなんだろ」と思う方が必ずおられますよね?

 

「この違いは、一体何なんだろう」

そういう事を今週は考えておりました。
決して、表現が上手い方(語彙の多い方)が良い挨拶を出来るという訳でもなく、

逆に、つたない言葉遣いなんですが妙に心に響く挨拶をする方もおられますよね。
小説やビジネス文章でもそうですが、

語彙が多い(表現のパターンが多い)方が、必ずしも

心に響く書き方を出来る訳ではありません。

逆に、語彙は今ひとつでも、なぜか心に響く文章を書かれる方もおられます。

この違い。

私は、「文章の裏にある価値観が違うから」ではないかなと、思っています。

 
例えば、新人営業マンさんの挨拶で考えてみますと。

下のように、AさんとBさんの挨拶が続いた場合、どういう風に感じられますか?

 
新人Aさん

「新卒のAと申します。大学時代は○×サークルでリーダーをしておりました。

営業マンとして最高の結果を出し、トップを目指して日々努力をしていきます。

この会社は研修制度も充実していますので、そういうものにも積極的に参加し、

自分の実力を磨き、常に上を目指していきます。よろしくお願いします」

新人Bさん

「新卒のBと申します。大学時代は○×サークルに所属していました。

まだまだ未熟でご迷惑をおかけするかと思いますが、一日も早く仕事を覚え、

△□営業所のチームの一員となれるよう頑張ります。

皆様どうぞよろしくお願いします」

 

…さて、いかがでしょうか。
どういう人物を求めるかにもよりますが、

私の場合、Bさんの挨拶の方が心に響くなと思います。
客観的に見れば、Aさんの方がモチベーションも高く、実力もありそうですし

営業マン向きだなというのが見て取れますよね。
ただ、このAさんの挨拶の裏にある価値観を考えますと、

基本的に「自分が上に行く。トップを目指す」という考え方ですよね。

(「最高の結果を出し、トップを」「自分の実力を磨き、常に上を」

あたりの文面からそれが見えます)

営業さんがそれぞれバラバラに動き、成績を競い合う会社であれば

Aさんのような方が一番求められます。
しかし、逆に、他の営業さんと連携を取りながら、調整する営業スタイルの

会社ですと、こういう方が来られた場合非常に面倒な事になります。

 
私がBさんが良いと思ったのは、一点だけです。

それは「チーム」という言葉が出てきた点です。
この言葉は、

「営業マンといえど、競争だけではなく

連携して働いていかなければいけない(周りを見れる視野の広さが必要)」

という事をわかっていないと出てきませんよね。
この単語を言えるというだけで、その人の価値観が伺えます。
Aさんの挨拶からは、それが伺えませんよね。

 

この二人の違い。

ここに、文章の書き方全てにいえる、大切な法則があると思います。
文章の表現技法は、あくまでも「技術」の話です。

Aさんがどれ程に語彙が多くて表現の上手な方であったとしても、

「自分がトップに立つんだ。周りは関係ない」という思想を持っていたとしたら

挨拶文を何時間考えようとも「チーム」という言葉(表現)は出てきません。
それはAさんの思想に合わないからですよね。

Bさんも同じです。

この方のように、他の営業さんとの連携、関係を考えながら頑張ろうという

思想を持っている限り、他を出し抜いてでもトップへ行くという

高いモチベーションは持ちにくいでしょうし、

「トップを目指す」という言葉は出てこないでしょう。

それはBさんの思想にあわないからです。

 

つまり。

それぞれの思想が、使う言葉に出ているという事です。

(これは新卒さんだけではなく、全ての方に言える事です。

社長と一般社員の使っている言葉を比べると、同じ内容を話しているのに

使っている言葉が全く違います。一度試しに聞き比べてみて下さいね)

 

私達は文章を考える時、おおよそ最初に思い浮かぶ言葉を使う傾向があります。

「こういう事を書きたい」と思って、それをどうやって文章にするか考えると、

最初に思い浮かんだ文章をまず書きます。

それがあまりにおかしな場合は、書き直しを考えます。

そしてまた、最初に浮かんだ文章を書きます。

最初から何十パターンもの表現を並べて、どれが良いのかを

一文一文考えるような事はしませんよね。

(そんな事をしていたら、メール一通を書くのにも数日かかってしまいます)

その「最初に浮かんでくる言葉」がキーポイントです。
最初に浮かぶ言葉というのは、当然ですが、

自分の思想にあった言葉が出てきます。

先ほどのAさんの例では、「競争」「トップ」「上」「向上」「上昇」

といった言葉が最初に思い浮かぶでしょう。

Bさんであれば、「連携」「調整」「関係」「全体」という言葉が出てきます。

その人の置かれている状況、環境、考え方、思想。

そういったものの影響を受けて、「最初に思い浮かぶ言葉」は決まります。

人物が違えば、出てくる言葉(使う言葉)は違います。

「なぜその言葉を使うのか」
それを考えると、その方の背景が見えてきます。そこには、その方の

価値観や思想が出ているからなんですね。

小説の場合はもっと顕著に出ますよね。

「いろんな人物を登場させても、なぜかよく似た人物ばかりになってしまう」

という問題を抱えておられる場合は、おそらくこの点でミスをしているんだと思います。
つまり、「自分の(作者の)価値観だけで書いている」という問題です。
小説には多くの人物が登場します。

当然、それぞれに価値観が違います。

そうすると、同じ事を言おうとしても、キャラクターによって

使う言葉や表現方法が違います。(彼らの価値観にあった言い回しをします)

 
それが出来ていない、つまり、作者の価値観だけで書いていくと

どうしても全員がよく似た言葉を使う事になってしまうんですね。
「なぜ、その言葉を使うのか」

これは、突き詰めれば突き詰める程、奥深いテーマですよね。

「言葉はその人の人生を表す」とも言います。
なぜその言葉を使うのか。
それを考えながら日々の文章を書きたいものですよね。
言葉選びに悩まれた際は、是非思い出して頂けると幸いです。