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脇役を活かす方法

「脇役がどうしても薄くなってしまう」
「敵役が本当に戦うだけになってしまう」
「主人公以外の人物が目立たない」

長編小説を書かれている方からよくこのようなお悩みを耳にします。

長編小説ではどうしても人物が多くなり、一人一人の個性が見えにくくなりがちです。
特に敵役やチョイ役の登場人物については、その人の個性や人生の背景などを
いちいち描ききれない、そんな問題を避けられません。

しかしこういった表現の問題には、たいてい何かしらの解決方法があります。
そのひとつ、最もシンプルで効果のあるやり方。それは「何度も登場させる」です。

あまりにシンプルで信じられないかも知れませんが、実はこの方法、非常に多くの長編小説で使われている方法です。
例えばあの名作、司馬遼太郎「燃えよ剣」でも使われています。

土方歳三の昔のライバルが年を取った後も何度も出てきます。何年かに一度戦うという関係が続き、それが偶然の出会いにせよ狙っているにせよ、トータルで四・五回は再開、再戦がありました。

もしこの四・五回の戦いをもし全て別人(新規の敵)にしてしまった場合どうなるでしょう?
「こいつは何者だ」と読者が思うその間にもう決着が付き、倒された相手は二度と出てきません。それが四・五回続くと…その一回きりの敵役は果たして読者様の心に残っているでしょうか?

残らないですよね。
 

そう、一度きりで背景も個性も語られないキャラクターは消えていく運命にあります。


それならば、そのような意味のないキャラクターをあえてあなたの作品に出す必要はありません。

あなたの作品ではキャラクター全てが活きている。

そう言われるためには、一度きりのキャラクターを限界まで減らす事が効果的です。

 

そして、そのようなキャラクターが必要な場合は、既存の登場人物の誰かで代用が出来ないかを考えてください。
多くの場合、あえて新規のキャラクターを出さなくても、今いる登場人物で何とかできる場合がほとんどです。

そうして同じメンバーで作品を回していく事によって、今出ている人物により多くの時間(ページ)をさく事が出来るようになるのです。

 

しかし、この方法を使う上でひとつ、気をつけなければならない点があります。

それは、「可逆的でないこと」です。

アンパンマンのアニメを思い出していただきたいのですが、あの作品ではいつも「アンパンマン VS バイキンマン」ですよね?

バイキンマンはいつも同じような格好、同じような強さで、何回負けても変化も発展も見られません。
このように、何回でも同じストーリーが書けてしまう事を「可逆的(何度でも繰り返す事ができる)」と言います。

この可逆的なパターンから抜け出すには、単純に 「もう戻れない仕組み」を作ってやればOKです。

例えば、ある敵と何度も戦っているなら、「3回目の戦闘で敵は右腕を失った」などのように、二度ともう右腕のある戦闘を繰り返す事が出来ないシーンを作ってやればいいのです。

 

その証拠に、何度も同じパターンを繰りかえす事が必要な可逆的な作品(水戸黄門など)では、決して二度と元に戻れない重症を負ったり、重要なキャラクターの死はないはずです。

それは、不可逆な傷や死を負ってしまうと、もう同じパターンの作品が作れなくなるからです。

例えば、水戸黄門が右足を負傷して、自分で歩けなくなったとしたら、どうでしょう? もう二度と「いつものパターン」は繰り返せませんよね? ここに読者側の緊張感が生まれ、「次回どうするの?」というワクワクが生まれてくるという事です。

これが「不可逆的」という意味です。

 

同じメンバーが何度も登場すると、読者側はどうしても「以前もこれと同じシーンを見たな」と感じやすくなります。同じシーンの繰り返しは小説では失敗の原因です。
中だるみになりがちなのです。

そんな時は、メンバーが同じでも環境や心境、状況、負っているものなどを変えて、不可逆的にして
「メンバーが同じでも前回とは全く違うんだぞ」とアピールする事が大切です。

この点だけを守れば、あなたの小説には深みが生まれ、キャラクターが活きてきます。

今日から、一度きりで忘れられるキャラクターとは「さよなら」しましょう!